2024年2月3日土曜日

2月2日の日記

かなり死にたいけどまだ生きてる。

ヴィム・ヴェンダース監督の『PERFECT DAYS』を観た。
勤勉なトイレの清掃員を、日常の細部まで鮮明に追いかけた映像。
役所広司演じる主人公は無口な人物で劇中ほとんどしゃべらない。かわりに、映画ではこれでもかというほど生活音が強調されている。衣擦れの音、植物に水をやる音、歯磨きの音、階段を降りる音、玄関の開けしめの音。
1週間単位で繰り返されるルーチンの中で、そうした細かな音が、実に楽しそうに響く。
役所広司のキャスティングは絶妙だった。
生きていることは本質的に楽しいんだということが、主人公の立てる音と、役所広司の微妙な表情から説得力をもって伝わってくる。銭湯で身体を洗ってるだけであんなに楽しそうにできる役者さんはなかなかいないんじゃないかと思う。

他に、『燃える平原児』『東京物語』『ミラクル・ニール!』『無法松の一生』(1943年版)を観た。
燃える平原児はいわゆるアメリカの夜(カメラのレンズにフィルターをつけることによって日中の屋外で夜のシーンを撮影する技法)の多用が気になったけど、力強くていい映画だと思った。

NHK出版の「学びのきほん」シリーズの本が面白くて、今年になってから2冊読んだ。
釈徹宗『お経で読む仏教』と山本芳久の『キリスト教の核心を読む』。
どちらも大学の教養課程の講義を1学期分受けたような満足度。

死ぬまで生きていかなくちゃいけないので本でも読みながらどうにかこうにかやっていきます。

2024年1月11日木曜日

1月11日の日記:新年、スターオーシャンセカンドストーリーR、生きる

生活のエアポケットに入ってしまったような感じでこのところしゃきっとしない。
年末年始の数日間あれこれに追われていて、年末らしいこともお正月らしいことも特にせず、年が明けたという気分がなかった。ようやくおととい初詣に出かけて、なんとなく、2024年になったのかなあという気がした。

新年の抱負は、ない。
がんばっていきたいなあという抽象的な思いというか、あるいはがんばったほうがいいんだろうなという理性的判断みたいなものはあるけど、それを具体的な形にして、目標として進んでいく、ということができない。
憂鬱で何もできないということでもなく、日々それなりの活動はしているのだけど、自分を高めていこうとか、理想を実現しようとか、そういった高次のエネルギーみたいなものが、消失してしまった。
生活しかない。

今私にある希望は、非常に即物的というか物質的な幸福にかんするものばかりで、それさえどうにかなればということくらいしか考えられない。物質的な幸福というのは、つきつめて言えば、餓死したくないという程度のことです。

どうにか残りの人生を餓死せずにすんで、プラスアルファでゲームをやったり映画を観たりできれば、それでいいかなと思う。それはあまりにも贅沢な願いだと思うけれど。

ゲーム。
昨年からプレイしていたスターオーシャンセカンドストーリーのリメイク版をクリアした。
全体的な体験としてとても満足のいく作品だった。
原作(PS版)の魅力が損なわれていないのはもちろん、それに加えて、Switch/PS5の時代にふさわしい現代化の細部がいちいち気が利いていて、かゆいところにちゃんと手が届いていた。
たとえば機能的な面でいうと、ファストトラベルの仕組みとか(探索済みの街やダンジョンへの移動が早くなったのはもちろん、特定の街での期間限定イベントの有無なども簡単に把握できるようになった)、あたらしい特技とか(用心棒という新特技を使えば自分より弱い敵を戦闘画面に入らずに倒すことができる。戦闘がシンボルエンカウント方式になったことと相まって探索の作業的な部分を短縮可能になった)が優れていた。
細かいUIなどもよくできていて、ストレスフリーになっていた(最新の大作ゲームでも案外UIが行き届いていないことが多い)。
グラフィックやサウンドの面もよかった。原作のキャラのドット絵をいかしつつ、新たに作られた背景グラフィックなどとも自然にマッチしていたし、描き下ろしの2Dイラストもすばらしかった。

というわけでスターオーシャンセカンドストーリーRはとてもよいゲームでした。
クリアしたのはクロード編の通常モードのラスボスだけなので、ぼちぼちレナ編をやったり、裏ダンジョンに挑んだりしていきたいと思います。
今回数十年ぶりにスターオーシャンセカンドストーリーというゲームをプレイして、改めて私はこの作品が好きだなと思った。決して完成度の高い大作とかではないし、ゲームの歴史のなかで堂々と真ん中に立っているわけではない、みょうちくりんなところのある作品だけど、それでも私はこの作品が好きだ。ドラゴンクエストやファイナルファンタジーよりも、好きだ。

映画。
この数日暇になって、家で映画を観ていた。
『リズと青い鳥』と『秋刀魚の味』と『生きる』の3作。
冒険する気持ちになれないので、おもしろいだろうなとわかっている作品だけ。

黒澤明監督の『生きる』だけ初見。なんとなくの話(退屈な役人が癌による死の宣告を受けて、市民の要望を精力的に叶えるいきいきとした人物に生まれ変わる)は知っていたけど、実際に観てみてたいへんおもしろかった。
冒頭のナレーションを聴いて思ったのは、これって帝政ロシア文学なんじゃないの?ということ。ドストエフスキーとかゴーゴリとか、あのあたりの、なんのとりえもない小役人を主人公に据える文学作品に、とてもよく似ている。だいたいそういう作品の主人公は、同僚とか家族とかの身の回りの人間に軽んじられていて、自分自身たいした人間だとは思っておらず、ただ漫然と職場に通って家に帰ることだけを繰り返している。そういう類の人物像で、そういう類の社会観で作られた作品という印象だった。
(そういえば村上春樹の「かえるくん東京を救う」の主人公もそういう意味でロシア文学的だ。)

映画のストーリーはとても楽しみつつ、自分には死を意識して生まれ変わるということはとてもできないなとも思った。

2023年12月25日月曜日

2023年のよかった本、映画、ゲームふりかえり

 ・本
京極夏彦『絡新婦の理』
須賀敦子『霧の向こうに住みたい』
塚本邦雄『菊帝悲歌 小説後鳥羽院』
西尾維新『キドナプキディング 青色サヴァンと戯言遣いの娘』
ヘミングウェイ『移動祝祭日』

・映画
S・S・ラージャマウリ監督『RRR』2022
大島渚監督『戦場のメリークリスマス』1983
ポール・ヴァーホーヴェン監督『ベネデッタ』2021
ヤン・シュヴァンクマイエル監督『オテサーネク』2000
是枝裕和監督『怪物』2023
宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』2023
チャド・スタエルスキ監督『ジョン・ウィック:コンセクエンス』2023
八代健志監督『劇場版ごん』2019
北野武監督『首』2023

・ゲーム
『MOTHER2』
『ペーパーマリオ オリガミキング』
『天穂のサクナヒメ』
『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』
『ブルーアーカイブ』


今年はあまり本を読めなかった。
ミステリとSFの古典を毎月1冊ずつ読んで、ジャンルの体系的理解を深めていく という計画をしていたけれど、それは果たせず、ミステリはほとんど京極堂だけだし、SFも片手で数えられるほどで、プランは丸つぶれという次第でした。

『絡新婦の理』は京極堂シリーズの一作で、コテコテの新本格。
物語に引き込まれてしまって、一晩でほとんど一息に読んだ。これと『姑獲鳥の夏』が好きな京極夏彦作品の双璧で、今の気持ちとしては『絡新婦の理』がやや上回るかなというくらい。なんといっても萌え萌えキャラ大集合なのがいい。第3位を決めるなら『陰摩羅鬼の瑕』(これも伯爵が萌え萌えだから)。

須賀敦子『霧の向こうに住みたい』は前々から気になっていた作家のエッセイ集。
今年は本を読めなかったけど、須賀敦子に出会えたから、それでよかった。


映画。
『戦場のメリークリスマス』を劇場で2回観た。たぶんこれまでに4回くらいは観ているけど、観るほどに感動が深まっていく。いちばん好きなラブストーリー。

『ジョン・ウィック:コンセクエンス』は、まさか4作目にして最高傑作になるとは思ってなかった。いちばんばかばかしくて、いちばん染みるシリーズ作品だった。パロディの癖とかはある意味でタランティーノなんだけど、そこまではかわいてないというか、もう少しリリカルでセンチメンタルでヒューマンでハードボイルド。

今年は『怪物』『首』『君たちはどう生きるか』など邦画の新作もよかった。


ゲーム。いっぱい遊んだ。
いちばん気に入ったのがどれか決められないほど夢中になった。
うーん、でも『オリガミキング』かも。いや『サクナヒメ』? どっちもキャラの魅力がとてもよくて、クリアした後しばらく「もうあの仲間たちとの日々は終わりなのか」と寂しい気持ちになった。

2023年11月7日火曜日

11月7日の日記

スターオーシャンセカンドストーリーRをプレイしはじめた。
たのしい。快適。
今はアシュトンを仲間にして、ギョロとウルルンを祓うために冒険してるところ。
バーニィで旅をしていると、大陸のあちこちにレイドボスというのがいるのだけど、怖くてまだ一度も挑んでいない。
ブラウザでプレイできる体験版もあるから遊んでみてね。

『異世界おじさん』と『その着せ替え人形は恋をする』の最新刊を読んだ。
その着せ替え人形→ごじょー君がクラスメイトの子と仲良くしててよかった。
異世界おじさん→メイベルがどんどん動物になる。

あと詩集とか塩野七生の『ギリシア人の物語』最終巻とか買ったので、読んでる。

最近ずっといちごのショートケーキが食べたくて、それでケーキ屋さんに行ったら、メロンのショートケーキしかなくて、「メロンか……」と迷って結局買わなかった。

2023年10月29日日曜日

10月29日の日記:ペーパーマリオ オリガミキングをクリアした

今月頭にMOTHER2をクリアして、それからオリガミキングをプレイしていた。
ペーパーマリオは初体験だけど、とてもかわいくて楽しいゲームだった。



旅の仲間のオリビアがかわいい。とてもかわいい。



「あなたなんて ポコポコですわ!」とか、喧嘩口調がへたでかわいい。


かわいすぎる。


道中で出会ったボム平さんとの旅も楽しい。


いっぱい遊ぼうね……


…………

キャラクターも建物も風景も全部が紙でできてる世界がめちゃくちゃ美しくてグラフィック面大満足とか、演出楽しいとか、各ステージの音楽も楽しいとか、ゲーム面は最初パズルが難しすぎると思ったけど、だんだん慣れてくるとアクションとパズルの兼ね合いが私にはちょうどいいかなと思ってきたりとか(アクション一辺倒だと私にはクリア無理だし、パズル部分にはヒントもあるし、一回で解けなくても大抵はどうにかなるし。でもオリー戦は10回ゲームオーバーした)、あれこれ感想あるんだけど、今はただオリビアのことで頭がいっぱいです。

2023年10月7日土曜日

10月7日の日記

テレビで七尾旅人が歌っているのを観て、それで久々に七尾旅人のアルバムを聴いて、いいなあと思った。
七尾旅人はインターネットで知り合った人に教えてもらって、しばらく狂ったように熱心に聴いていたのだけど、いつのまにかあまり触れなくなっていた。その人と疎遠になったせいもあるかもしれない。

今その人がどこで何をやってるのか、生きているのか死んでいるのかもわからない。
ときどきその人のことを思い出すけれど、今では私も世の中も変わってしまって、その人と再会するようなことがあってもお互いに話せることもない気がする。

思えば今までの人生でずいぶんいろいろな人と疎遠になってきた。だいたいぜんぶ私が悪いような気がする。
私は人間のことを記憶できないたちなので(相貌失認であることと関係があるかもしれないし、あるいは単に薄情なだけかもしれない)、長らく付き合いのない人間については、その存在をぼんやりと記憶していても、名前その他の識別情報をすっかり忘れてしまっていることも多い。
そんな具合に、私の存在も他人からどんどん忘れ去られて行くのかもしれない。
今、私のことを記憶している人間って、誰かいるのだろうか。いるとしたら、何人くらいいるのか。自信がない。
こういうことを思う人生を生きてきたのは、かなりさびしいことなのかもしれない。

七尾旅人を教えてくれた人には、もしどこかで見つけたら、この数年読んで好きになった詩人の詩集についてだけ教えたいけど、よく考えたらそいつは当時私が好きな詩人の話をしたら、そんなのつまらないよみたいな反応をしたので、またそう言われるだけかもと思った。
それとも、それは違う人だったっけ? もうよく覚えてない。まあいいや。暁方ミセイの『ウイルスちゃん』と蜆シモーヌの『なんかでてるとてもでてる』がよかったので、読んでください。あんまり悪く言わないでね。

2023年10月5日木曜日

10月5日の日記:京極夏彦『塗仏の宴』、MOTHER2

ちょっとブログの字を大きくした。しっくりこなかったら戻すかも。


京極夏彦の『塗仏の宴』の前後編を読んだ。長いよ!(感想)

なんか長いし、4月にシリーズ前巻の『絡新婦の理』を読んで、それから『塗仏』に入ったけど直後に鬱になったのもあって、読了までに半年もかかっちゃった。

よかったところ。
最初の関口巽が謎の村に入っていく章が怖い。百鬼夜行シリーズを読んできて一番怖いシーンだった。
「塗仏」の起源について京極堂たちがああでもないこうでもないと議論するシーン。小説の中でああいう半ば研究発表みたいなやつがあると嬉しい。
拳法使いとか色んなキャラが大集合して抗争を繰り広げるところ。誰が誰かよくわからなくなったけど楽しかった。榎木津礼二郎もめちゃくちゃ動いてたし。

よくなかったところ。長い。好きなキャラが死んだこと……

以上。次はそのまま『邪魅の雫』に入る。
新刊の『鵺の碑』はまだ買ってない。文庫まで待つかも。


引き続きMOTHER2をプレイしてる。
おまえのばしょ8箇所を攻略し終えて、そろそろ終盤? ラストダンジョン近く? まで来てる雰囲気。クリアしちゃうのさびしい。


おまえのばしょは7番目のルミネホールの演出がよかった。
全般的にグラフィックも音楽もよくて、さすが長年親しまれてる名作ゲームだな〜と思った。
アイテムを持ち運べる個数の制限が厳しすぎることとか、レトロゲーム的システムの制約でやきもきさせられるところが多いのは残念な点。色々変な装備とかアイテムとかがあるんだけど、とにかくインベントリの制限がキツイからあれこれ買ったり拾ったりできない。お店に売ってるけど使い方のわからないアイテムがいっぱいある(買わないと用途がわからないけど、用途不明のアイテムを買うのに毎回インベントリの空きをやりくりするのが大変だから)。ちょっと惜しい。
「物を持ちすぎるのはよくない」みたいな現代人へのメッセージ性なのかもしれない。スーパーファミコンの容量の制約でアイテムが少なくなってるとかじゃないと思う。でもえすにはRPGでは買えるアイテムは全部買ってとっておきたいタイプなんだ。
ミニマリストとはほど遠い。