2022年1月21日金曜日

1月中旬に読んだ本、観た映画:『門番少女と雨宿りの日常』『考える親鸞』『マトリックス レザレクションズ』

引き続き読んだ本のメモ。
一覧にしてみると、むしろいかに読んでいないかということが浮き彫りになって、焦りのようなものがうまれる。

変わった筆名の新人によるライトノベル『門番少女と雨宿りの日常』は中学での体験をきっかけにドロップアウトした主人公と、エキセントリックなヒロインとのボーイ・ミーツ・ガール。挿絵すらないキャラも含めて脇役とのやりとりがよくて、本筋は主人公たちのボーイ・ミーツ・ガールだけど、むしろ脇役たちとの交流が肝だと思った。著者次作にも期待。
この物語はたぶんこの一冊でおしまいなんだろうけど、私としては鳩田未来ちゃんをさらに深く掘り下げてほしい。好きなので。よろしくおねがいします。

近代仏教の研究者碧海寿広先生による近刊『考える親鸞』は清沢満之から吉本隆明に至るまでの近現代の親鸞論がいかなるものであったかを概説する良書。明治以降の日本人の『歎異抄』贔屓について、教養主義の流れの中で仏教伝統から切り離された個人が「書物」自体を「師」のようにして受け取った、歎異抄そのものにそのような受容を可能にする構造があったという指摘はよかった。

この10日の間に、アニマトリックスを除くマトリックスシリーズ作品を観た。
新作『マトリックス レザレクションズ』とてもよかった。三部作が叙事詩だとするなら、レザレクションズはしょうもない現実もしくは茶番劇。まさしく「現実の砂漠」といった風体。
こういう、すべて(「意味」のあるかっこいい出来事)が終わってしまった後に続かなくてはいけない、どうしようもない話が私は好き。
登場人物に重みとか格とかオーラとかカリスマみたいなものがないのがよかった。オラクルとアーキテクトは死に、ぽっと出のしょうもない精神科医が黒幕で、ネオは空も飛べない髭のおじさんで、あのスミスさえどうでもいい使われ方で、モーフィアスはトイレから登場する。クライマックスのbot爆弾のなんという醜悪さ。マトリックス・イズ・デッド! でも我々は何もかもが終わった後の世界で生きていかなくてはいけない。歴史は終わった。現実の砂漠を生きよう。

『舞ちゃんのお姉さん飼育ごはん。』第3巻はあいかわらずよかった。言うことない。タマかわいい。


上から読んだ順。

・本 10冊 通算21冊
寿司サンダー『門番少女と雨宿りの日常』KADOKAWA、2021
飛浩隆『SFにさよならを言う方法:飛浩隆評論 随筆集』河出書房新社、2021
最果タヒ『夜空はいつでも最高密度の青色だ』リトルモア、2016
榎宮祐『ノーゲーム・ノーライフ:プラクティカルウォーゲーム』KADOKAWA、2016
三好達治『測量船』講談社、1996
くまなの『くまクマ熊ベアー18』主婦と生活社、2021
じゃき『最凶の支援職【話術士】である俺は世界最強クランを従える4』オーバーラップ、2021
蜆シモーヌ『なんかでてるとてもでてる』思潮社、2021
飛浩隆『自生の夢』河出書房新社、2019
碧海寿広『考える親鸞:「私は間違っている」から始まる思想』新潮社、2021

・漫画
伊藤いづも『まちカドまぞく』1、芳文社、2015
ねじがなめた『女の子が抱いちゃダメですか?』2、小学館、2021
ほしの瑞希『みにあまる彼氏』1、集英社、2018
秋津貴央『舞ちゃんのお姉さん飼育ごはん。』3、竹書房、2021
ミト『狼の皮をかぶった羊姫』1、竹書房、2021
つっつ『おむじょ!』1、コアミックス、2017
つっつ『おむじょ!』2、コアミックス、2019
茅田丸漫画、丁々発止原作『幼女とスコップと魔眼王』3、講談社、2022
有城壱哉『白い結婚:王と王妃の恋ものがたり』バルバレーゼ、2022

・映画
ウォシャウスキー姉妹監督『マトリックス』1999
同上『マトリックス リローデッド』2003
同上『マトリックス レボリューションズ』2003
ラナ・ウォシャウスキー監督『マトリックス レザレクションズ』2021

2022年1月11日火曜日

1月上旬に読んだ本

今年は1日1冊、年間365冊読むことを目標にしている。
一度も読んでいない「積読」がたまっているし、必要があって読み返したい本もたくさんある。365冊では追いつかないくらいだけど、とりあえずこのくらいを目安にしていきたい。
漠然と年間365冊と考えていると多分あっという間に守れなくなりそうなので、とりあえずは一月を3分割して、上旬・中旬・下旬にそれぞれだいたい10冊ずつ読むことにしたい。
昨年までは漫画は読んだ本の数に入れていなかったけど、最近は漫画も積むようになってしまったし、忙しさにかまけてなかなか読めていないので、可視化するために漫画以外の書籍とは別枠で同様に記録する。
あとは映画とかも観たら記録したいけど、あいにく今月はまだ映画を観ていない。

『伊藤比呂美の歎異抄』はとてもよかった。
題は『歎異抄』だけど、親鸞聖人の和讃や手紙などの現代語訳も含まれている。
中でも正信偈がよいと思った。

ヴェイユは断章を集めた『重力と恩寵』については以前より愛読していたけど、ペラン神父宛の手紙や論文などをまとめた『神を待ちのぞむ』は今回はじめて読んだ。
その中で称名念仏について触れている箇所があって、少し意外だった。
 宗教のつとめの力を全体として考えるには、救い主の名をとなえる仏教の伝統によって考えるのがよい。仏陀によって救われることを望んでその名をとなえるすべての人々を、仏陀は彼岸において、彼自身のところまで高める誓いをたてたと言われる。そして、この誓いのゆえに、救い主の名をとなえることには、現実に魂を変形させる力があると言われる。
 宗教とはこのような神の約束以外のものではない。すべての宗教のつとめ、すべての祭儀、すべての典礼は救い主の名をとなえる一形式であり、原理的には実際に一つの効力を持つはずである。救われることを望んで一生懸命にとなえる人は、だれでも救われるという効力である。
シモーヌ・ヴェーユ「はっきり意識されない神への愛の諸形態」『神を待ちのぞむ』渡部秀訳、春秋社、2020[初版1967、新版2009]、172ページ
ヴェイユはどこから浄土教について学んだんだろうか。鈴木大拙? そのへんの事情について詳しい方がいたらぜひ教えてください。

『鈴木ユリイカ詩集』は昨年書店でたまたま手にとって、冒頭の詩「生きている貝」にひとめぼれして買ったが、やはりとてもよかった。他の詩集も読んでみたい。


1月上旬(1日〜10日)
・本
高橋源一郎『デビュー作を書くための超「小説」教室』河出書房新社、2015
長田弘『深呼吸の必要』角川春樹事務所、2018
伊藤比呂美『伊藤比呂美の歎異抄』河出書房新社、2021
鈴木ユリイカ『鈴木ユリイカ詩集』思潮社、2015
先崎学『うつ病九段:プロ棋士が将棋を失くした一年間』文藝春秋、2020
広瀬大志『広瀬大志詩集』思潮社、2016
村上春樹『海辺のカフカ下』新潮社、2005
カニエ・ナハ『用意された食卓』青土社、2016
フィリップ・マティザック『古代ローマ旅行ガイド:一日5デナリで行く』安原和見訳、筑摩書房、2018
最果タヒ『死んでしまう系のぼくらに』リトルモア、2014
シモーヌ・ヴェーユ『神を待ちのぞむ』渡部秀訳、春秋社、2020[初版1967、新版2009]

・漫画
桜井のりお『僕の心のヤバイやつ』第6巻、秋田書店、2022