2019年3月21日木曜日

3月21日の日記:FACE展、VOCA展

現代美術の展覧会を観に行った。損保ジャパン日本興亜美術館のFACE展と上野の森美術館のVOCA展。公募展と推薦という違いはあるものの、いずれも若い作家の作品を集めた展覧会で、知っている名前はなかったけれどすごく楽しかった。

現代美術の感想の例として、よく「わからない」というのが挙げられる。それは大抵の場合は、たぶん「作品の意味」がわからないということなのだろうけど、今日私が多くの作品を観ながら感じたのはそれに似ていて、でも少し違う、どうしてこういう作品を描いたのだろう?という疑問だった。いったいどういう動機でこの画題を選んだのだろうとか、どうしてこの画材を使ったのだろうとか、どういう経緯でこういう描き方にいきついたのだろう、この作者はどういう生活をしているのだろう、描きながら何を考えていたのだろう、といった考えが次から次へと湧いて出た。心の奥底の暗い情熱をキャンバスに塗りたくらずにはいられなかった……という「風」に観える作品もあれば、もっとクールに理知的に制作されたように観える作品もあり、邪推してしまえば「美術の世界でなんとか抜きん出てやろう」と一生懸命になって、そのために新奇なものを作ろうという欲望から抽出されたような絵もあった。でもそういう奇をてらったように見える作品にも、なにか私の知らない内的・文脈的な必然性があるのかもしれないし、すべては謎だ。

お昼は新宿の地下にある直久というラーメン屋で炙りチャーシュー麺を食べた。びっくりするほどチャーシューがいっぱい載っていて食べるのが大変だったけれど満足した。チャーシュー麺を食べるのはとても久しぶりだ。今世紀はまだ食べてなかったかも。


長らく読んでいた『さようなら、私の本よ!』を先週の土曜日にようやく読了した。11月か10月から読んでいたので、かれこれ1クール超もかかったことになる。
同作者の前作『憂い顔の童子』と同じく、終盤が圧倒的に面白くて、最後の方は夢中になって読み進めた。
最後が面白い小説はとてもいい。

今日の移動中は塩野七生の『ローマ人の物語』のガイウス・マリウスやスッラの章を読んでいた。このあたりの部分はローマの政治や社会のありようが次々と変革していくのが面白い。
ファンタジー小説では(と、私が言うのは主に『小説家になろう』などのWeb小説を想定しているが)、村や街や都市や国家や王や皇帝や貴族や僧侶や騎士や領主や企業やギルドや大学や貨幣や法律や財産や民族や人種や宗教や神やなにやかやが当たり前のように登場するが、現実の世界の歴史上でも(ひょっとすると現代でも)まったく自明ではないそれらの概念が異世界の社会の中に当然に存在していて、作中で現代日本語の等価物を与えられているのは考えてみれば変なことだ。